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MVVの作り方。社員が自分の言葉で話せる理念の設計
MVVをつくることになったけれど、何から始めればいいのか分からない。経営者だけで考えると、立派だけれど誰も使わない言葉になりそうだ。そんな不安を持つ方に向けて、社員が自分の言葉で話せるMVVをつくる進め方を、準備から完成後まで順番に整理します。

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)をつくるとき、いちばん大事なのは、きれいな言葉を考えることではありません。社員がその言葉を自分の言葉として話せるようになることです。経営者が考えた立派な言葉を配っても、ふだんの会話で使われなければ、会社の力にはなりません。
この記事では、社員が自分の言葉で話せるMVVをつくるための進め方を、準備から完成後の展開まで順番に紹介します。誰とつくるか、どう言葉を選ぶか、つくったあと何をするか。それぞれの場面で使える問いや確かめ方もあわせてまとめます。MVVそのものの意味は、MVVとは?ミッション・ビジョン・バリューの違いと役割で紹介しています。
MVVづくりの全体の流れ
MVVづくりは、おおまかに次の5つの段階で進めます。
- 準備:なぜいまつくるのか、誰が関わるのか、いつまでにつくるのかを決める
- 聞き取り:いまの会社で大事にされていることを、経営者と社員から集める
- 言葉にする:集めた声から、ミッション・ビジョン・バリューの案をつくる
- 確かめる:案を社員に見せ、ふだんの場面で使えるかを試す
- 広げる:決めた言葉を、採用・会議・評価などの場面に組み込む
多くの会社でおろそかになりがちなのが、2つ目の聞き取りと、5つ目の広げる段階です。言葉を考える段階だけに時間をかけると、できあがった言葉が現場から浮いてしまいます。
1. 準備:なぜいま、誰とつくるのか
つくる理由を一文で書く
最初に、なぜいまMVVをつくるのかを一文で書きます。「人が増えて、判断の基準がそろわなくなってきた」「新しい事業を始めるにあたり、会社として大事にすることを確かめたい」など、理由によって力を入れるところが変わります。理由があいまいなまま始めると、途中で「何のためにやっているんだっけ」となりやすくなります。
関わる人を決める
MVVづくりに関わる人は、おおまかに3つに分けて考えます。
- 決める人:最後に言葉を決める人。多くの場合は経営者
- つくる人:聞き取りや案づくりを進める数人のチーム。立場や年次、部署の違う人を混ぜる
- 声を出す人:聞き取りや案の確認に協力してもらう社員。できるだけ広く
つくる人のチームに、経営者に近い人だけを集めないことが大切です。現場の目線を持つ人が入っていると、できあがった言葉が現場で使えるかどうかを、途中で確かめられます。
2. 聞き取り:いま大事にされていることを集める
MVVは、何もないところから考え出すものではありません。会社の中にすでにある「大事にされていること」を見つけて、言葉にするものです。そのために、経営者と社員の両方に話を聞きます。
経営者に聞くこと
- なぜこの会社を始めたのか。いまも変わらない思いは何か
- 10年後、この会社がどうなっていたらうれしいか
- どんな社員の行動を見たときに、うれしいと感じるか
- 逆に、これだけはしてほしくないと思うことは何か
社員に聞くこと
- この会社で働いていて、誇らしいと感じたのはどんな場面か
- お客様から言われてうれしかった言葉は何か
- この会社で評価される人は、どんな行動をしている人か
- 新しく入った人に、この会社らしさをどう説明するか
質問は、考え方ではなく「場面」を聞く形にするのがこつです。「大事にしている価値観は?」と聞くと、きれいな言葉しか出てきません。「誇らしかった場面は?」と聞くと、具体的な行動が出てきます。その行動の中に、会社が本当に大事にしていることが隠れています。
聞き取りでは、よい話だけでなく、違和感や不満も出てきます。それも大事な材料です。言いにくいことを言ってもらうには、聞き手を経営者以外にする、話した内容を誰が言ったか分からない形でまとめる、といった工夫が役に立ちます。
3. 言葉にする:案をつくる
集めた声を並べて、くり返し出てくるものを探す
聞き取りで集めた場面や言葉を書き出し、似ているものどうしをまとめていきます。何人もの人が、違う言い方で同じことを話している。そこが、会社が大事にしていることの芯です。
3つに振り分ける
まとめたものを、ミッション・ビジョン・バリューに振り分けます。
- 「誰の、何のために」にあたるもの → ミッション
- 「どんな状態をめざすか」にあたるもの → ビジョン
- 「ふだん、どう動くか」にあたるもの → バリュー
言葉を選ぶときの確かめ方
案ができたら、次の問いで一つずつ確かめます。
- この言葉だけを読んで、うちの会社のことだと分かるか。ほかの会社にもそのまま当てはまらないか
- 新しく入った人に説明するとき、具体的な場面を1つ挙げられるか
- 迷ったときに、この言葉でどちらを選ぶか決められるか
- 声に出して読んだとき、社員が照れずに言えるか
とくにバリューは、「挑戦」「誠実」のような一語で終わらせず、「悪い知らせほど早く共有する」のように、場面で使える行動の言葉にします。数は3〜5つくらいに絞ると、覚えて使いやすくなります。
4. 確かめる:使えるかどうかを試す
案ができたら、決める前に社員に見せて、意見をもらいます。ただ「どう思いますか」と聞くのではなく、次のように具体的な場面で試してもらうと、使えるかどうかがよく分かります。
- 最近あった仕事の判断を1つ思い出し、バリューに照らすとどう判断するかを話してもらう
- 新しく入った人への説明として、MVVを読み上げて、伝わるかを試す
- 案の中で、いちばん自分の仕事に近いもの、遠いものを選んでもらい、その理由を聞く
ここで出た意見をもとに、言葉を直します。何度か往復すると、社員にとって「自分たちの言葉」に近づいていきます。
5. 広げる:ふだんの場面に組み込む
言葉が決まったら、それで終わりではありません。ここからが本番です。MVVを発表するだけでなく、使う場面を先に決めておきます。
- 採用:面接で、バリューに沿った経験を聞く質問を用意する
- 入社したとき:MVVが生まれた背景と、聞き取りで出た場面を伝える
- 会議:判断に迷ったとき、「バリューに照らすとどうか」と問う習慣をつくる
- 評価と面談:成果だけでなく、バリューに沿った行動ができていたかを話す
いちばん効くのは、経営者や管理職が、決めた言葉どおりに動いている場面を見せることです。言葉と行動がそろっているとき、社員はその言葉を信じるようになります。文化が日々の場面で育っていく考え方は、企業文化とは?つくれるもの、育てるもので紹介しています。
たとえば:社員数十人の会社で進める場合
社員が数十人ほどの会社で、通常業務と並行して進める場合の進め方の一例です。期間は会社によって変わるので、目安として読んでください。
- 最初の2週間:経営者とつくる人のチームで、つくる理由と期限を決める。聞き取りの質問を用意する
- 次の1か月:経営者に1〜2時間、社員には少人数ずつ30分ほど話を聞く。全員でなくてもよいが、部署や年次が偏らないようにする
- その次の1か月:聞き取りをまとめて案をつくり、社員に見せて意見をもらう。2〜3回直す
- 最後の2週間:経営者が言葉を決め、使う場面と、最初の3か月でやることを決めてから全社に伝える
途中で必ず起きるのが、「この言葉でいいのか」と迷って止まることです。そのときは、言葉の美しさではなく、「迷ったときにこの言葉で判断できるか」に立ち返って決めます。完ぺきな言葉を待つより、使いながら直すほうが、結果として会社になじむ言葉になります。
よくあるつまずき
言葉づくりを外にすべて任せる
言葉選びの手伝いを外に頼むのは、よい方法です。ただ、聞き取りから決めるところまで丸ごと任せると、きれいでも自分たちの言葉ではないものができあがります。誰の声をもとにつくったのかが、社員から見えることが大切です。
期限を決めずに始める
MVVづくりは、通常業務と並行して進むことがほとんどです。期限と節目を決めておかないと、聞き取りのあたりで止まってしまいがちです。目的・期限・関わる人を最初に決めて進める点は、ほかのプロジェクトと同じです(→ キックオフで、これだけは決めておく5つのこと。)。
まとめ:MVVは、会社の中にある言葉を見つける作業
- なぜいまつくるのかを一文で書き、立場の違う人でチームをつくる
- 考え方ではなく場面を聞き、会社の中にすでにある大事なことを集める
- くり返し出てくる声を、ミッション・ビジョン・バリューに振り分ける
- 「うちの会社だと分かるか」「場面を挙げられるか」で言葉を確かめる
- 社員に試してもらい、往復しながら直す
- 採用・入社・会議・評価で使う場面を、決める前に決めておく
社員が自分の言葉で話せるMVVは、会社の中にすでにある言葉を見つけ、みんなで磨いていくことでできあがります。
おまかせPMは、社内に進める人がいないプロジェクトを、進める役割ごとお引き受けするサービスです。MVVづくりのように、大事なのに後回しになりやすい取り組みがあれば、どこから手をつけるかの整理から、ご相談ください。
MVVは、何もないところから考え出すものではなく、会社の中にすでにある大事なことを見つけて言葉にするものです。