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企業文化とは?つくれるもの、育てるもの
理念をつくったのに、社内の雰囲気は何も変わらない。「うちの会社らしさ」を聞かれても、うまく言葉にできない。企業文化という言葉はよく聞くけれど、何に手をつければいいのかは分かりにくいものです。企業文化とは何か、どうやって育てていくのかを整理します。

企業文化とは、その会社で働く人たちが、ふだん無意識にしている判断と行動のくせのことです。理念として壁に貼られている言葉ではなく、「迷ったときに、この会社の人はどうするか」の積み重ねが文化です。だから企業文化は、一度つくって終わるものではなく、日々の場面の中で育っていくものです。
この記事では、企業文化とは何かを、よくある誤解とあわせて説明します。そのうえで、なぜ大事なのか、どうやって育てていくのか、取り組むときにつまずきやすい点を順番に紹介します。
企業文化とは?「くせ」として見ると分かりやすい
企業文化という言葉は、社風、組織風土、カルチャーなどとも呼ばれます。どれも指しているものはほぼ同じで、「その会社らしさ」のことです。
ただ、「らしさ」と言うとつかみどころがありません。そこで、次のような場面を思い浮かべてみてください。
- 会議で誰かが反対意見を出したとき、場の空気はどうなるか
- 小さなミスが見つかったとき、まず「誰が」と聞くか、「なぜ」と聞くか
- 上司が決めたことに疑問があるとき、口に出すか、黙って従うか
- 新しく入った人が困っているとき、周りから声をかけるか、聞かれるまで待つか
こうした場面での反応は、会社によってはっきり違います。そして、その反応の多くは誰かに指示されたものではなく、「ここではこうするものだ」と、いつの間にか身についたものです。この無意識の判断と行動のくせこそが、企業文化の正体です。
文化には、見えるところと見えないところがある
組織文化の研究で知られるエドガー・シャインは、文化を3つの層で説明しています。目に見える形(オフィスのつくり、服装、会議の進め方など)、掲げている価値観(理念や行動指針)、そしていちばん深いところにある、言葉にされないまま共有されている前提です。
大事なのは、いちばん深い前提が、行動をいちばん強く決めているということです。理念に「挑戦を歓迎する」と書いてあっても、「失敗すると評価が下がる」という前提が共有されていれば、人は挑戦しません。掲げている言葉と、実際の行動がずれるのはこのためです。
なぜ企業文化が大事なのか
企業文化は、目に見えにくいぶん、後回しにされがちです。けれど、会社の毎日に次のような形で効いてきます。
1. 指示がなくても、判断がそろう
すべての場面にルールを用意することはできません。ルールが届かないところで、人は「この会社なら、こうするはず」という感覚で判断します。文化がそろっていると、細かく指示しなくても判断の向きがそろい、仕事が速く進みます。
2. 人が定着しやすくなる
入社してから「思っていた会社と違った」と感じる理由の多くは、仕事の中身よりも、働き方や人との関わり方の違いです。文化を言葉にして、採用の段階から伝えておくと、合う人が集まり、続けやすくなります。
3. 変化に強くなる
人が増えたり、事業が変わったりすると、それまでの「あうんの呼吸」は通じなくなります。何を大事にしてきたのかを言葉にしておけば、人が入れ替わっても、判断の軸を引き継げます。
企業文化は「つくる」より「育てる」もの
企業文化は、宣言すれば変わるものではありません。一方で、放っておいて自然によくなるものでもありません。手をかけられるのは、文化そのものではなく、文化を形づくる「ふだんの場面」です。進め方は、おおまかに次の4つです。
1. いまの文化を、そのまま言葉にする
最初にやるのは、理想を描くことではなく、いまの姿を書き出すことです。社員に「この会社で褒められるのはどんなときか」「これはやめておこう、と感じるのはどんなときか」を聞いてみると、実際に共有されている前提が見えてきます。よいところも、変えたいところも、まずはそのまま書きます。
2. 大事にしたいことを、行動の言葉で決める
「誠実」「挑戦」のような一語だけでは、人によって受け取り方が変わります。「悪い知らせほど早く共有する」「迷ったら、お客様にとってよいほうを選ぶ」のように、場面で使える行動の言葉にします。数は多くしすぎず、覚えられる範囲にとどめます。
3. 決めた言葉を、ふだんの場面に組み込む
文化が育つのは、言葉が日々の場面で使われたときです。たとえば、採用の面接で聞くこと、新しく入った人に最初に伝えること、会議の進め方、評価の面談で話すこと。こうした場面で同じ言葉が繰り返し出てくると、少しずつ「ここではこうするものだ」になっていきます。
4. 上に立つ人の行動から変える
社員は、掲げている言葉よりも、上に立つ人が実際にどう動くかを見ています。「意見を言ってほしい」と言いながら、反対意見に不機嫌になれば、誰も言わなくなります。経営者や管理職が、決めた言葉どおりに動いている場面を見せることが、いちばん強い伝え方です。
言いにくいことが言えない空気は、プロジェクトの進み方にもそのまま表れます(→ プロジェクトが止まる本当の理由は、「言いにくさ」にある。)。
よくあるつまずき
理念をつくって、貼って終わる
いちばん多いのが、言葉を決めたところで満足してしまうことです。ポスターや社員証の裏に印刷されていても、ふだんの判断で使われなければ、文化にはなりません。決めたあとに、どの場面で使うのかまでを決めておきます。
経営者だけで言葉を決める
経営者が考えた言葉を、上から配るだけでは、社員にとっては「誰かの言葉」のままです。いまの姿を書き出す段階から社員に関わってもらうと、自分たちの言葉として受け取ってもらいやすくなります。
すぐに変わることを期待する
文化は、くせの積み重ねなので、変わるのにも時間がかかります。数か月で目に見える変化が出なくても、やめずに続けることが大事です。小さな場面で「言葉どおりに動けた」ことを拾い、みんなの前で認めていくと、変化は少しずつ広がります。
仕組みのほうが、言葉と逆を向いている
「チームで成果を出そう」と掲げながら、評価は個人の数字だけで決めている。このように、評価や会議の仕組みが言葉と逆を向いていると、人は仕組みのほうに従います。言葉を決めたら、いまの仕組みと食い違っていないかを確かめます。
人が入れ替わっても大事にしてきたことを引き継げるようにしておくことは、プロジェクトでも同じです(→ 担当者が異動しても、プロジェクトを止めない「残し方」。)。
まとめ:文化は、毎日の場面の中にある
企業文化とは、その会社の人がふだん無意識にしている判断と行動のくせです。理念の言葉そのものではなく、迷ったときにどう動くかの積み重ねが文化になります。
- まず、いまの文化をそのまま言葉にする
- 大事にしたいことを、場面で使える行動の言葉で決める
- 採用・会議・評価など、ふだんの場面に組み込む
- 上に立つ人の行動から変える
文化づくりは、何か月もかけて社内を巻き込んで進める、立派なプロジェクトです。ただ、通常業務と並行して進めると、どうしても後回しになりがちです。誰が、いつまでに、何をするのかを決めて進めることが、文化を言葉だけで終わらせない近道です。
おまかせPMは、社内に進める人がいないプロジェクトを、進める役割ごとお引き受けするサービスです。理念づくりや文化づくりのように、大事なのに後回しになりやすい取り組みがあれば、どこから手をつけるかの整理から、ご相談ください。
企業文化は、壁に貼った言葉ではなく、迷ったときにどう動くかの積み重ねです。